学校の英語の授業で、前置詞 from は一律で「〜から」と習った人がほとんどではないだろうか。
もちろん、それは間違いではない。
・go from Tokyo to Osaka(東京から大阪に行く)
などは、まさに「〜から」という訳がぴったり当てはまる。
しかし、実際の日常会話や海外のニュースを見ていると、次のような表現によく出会うはずだ。
・work from home(在宅勤務する)
・from what I understand(私の理解では)
・tired from work(仕事で疲れている)
・suffer from stress(ストレスに苦しむ)
これらの表現を見たときに、「どうしてここで from を使うんだろう?」と疑問に思ったことはないだろうか。日本の英語教育のまま「〜から」と無理やり訳そうとすると、頭の中がモヤモヤして言葉に詰まってしまうはずだ。
ネイティブスピーカーは、頭の中で「〜から」という日本語にいちいち変換して話しているわけではない。実は、上記の一見バラバラに見える表現は、すべて from が持つ『たった一つのコアイメージ』で完璧に説明がつくのだ。
この記事では、学校英語のような丸暗記を一切排除し、ネイティブが頭の中で描いている from のイメージを英語脳でわかりやすく解説する。読み終える頃には、初めて見る from の熟語や表現に出会っても、その正確なニュアンスを自分でスッと推測できるようになっているだろう。
この記事でわかること
- from の本質である「ある地点・原因・基準を出発点にする」感覚が掴める
- 「work from home」がなぜ at home ではないのか、その理由が納得できる
- 英会話の重要フレーズ「from what I know」などの仕組みが氷解する
- 「tell A from B(区別)」や「prevent A from doing(妨害)」が丸暗記なしで繋がる
- made from と made of の使い分けに、もう一生迷わなくなる
from の本当の意味は「〜から」ではない
まず大前提として知っておいてほしいのは、日本語の「〜から」は結果であって、from の本当の意味ではないということだ。
英語の前置詞は、言葉の定義ではなく「空間や心の絵(イメージ)」で成り立っている。日本語の訳語をいくら暗記しても、ネイティブの感覚に追いつくことはできない。では、彼らは from という文字を見た瞬間に、頭の中にどのような絵を描いているのだろうか?
from のコアイメージは「すべてはここから始まる」という起点の感覚である
ネイティブが感じている from の核心的なコアイメージ、それは「視点がある一つの『出発点(起点)』にあり、そこからエネルギーや意識が離れて動き出す」という絵だ。
何かが生み出されたり、行動を起こしたりするときに、「その大元のルーツ(根っこ)はここですよ」と指し示す役割を持っている。
この「出発点・原因・基準」という根っこのイメージさえ持っておけば、全ての用法が一本の美しい線で繋がる。実際の例文を使いながら、英語脳のシステムを紐解いていこう。
① 場所を出発点にする from
go from Tokyo to Osaka(東京から大阪に行く)
これは一番わかりやすいパターンの「空間の出発点」だ。意識の起点が「東京」にあり、そこから離れて大阪という到達点(to)へ向かっていく動きを表している。
work from home(在宅勤務する/家で仕事をする)
ここが英語脳の非常に面白いポイントだ。
私たち日本人は、つい「home=家」だから at home や in my house を使いたくなってしまう。しかし、ネイティブは work from home という表現を好んで使う。
なぜか。彼らにとって、在宅勤務とは「単に家という空間に閉じこもって作業をしている(at)」という意味だけではない。「自分の仕事(業務や通信、エネルギー)が、家という場所を『出発点』にして外(会社や顧客)へと向かって発信されている」という感覚なのだ。「仕事が家を起点に始まる」からこそ、from が最も自然にフィットするのである。
② 時間の起点になる from
場所だけでなく、時間の「出発点」としても from は大活躍する。
- from Monday(月曜日から)
- from today(今日から)
- from now on(これから、今後は)
これらもすべて、時間の流れるタイムラインの中で、「月曜日」や「今(now)」というポイントを意識の出発点としてピン留めし、そこから先へ進んでいくイメージだ。
③【この記事の目玉】判断の基準・材料になる from
ここが、既存の英語の参考書がなかなか言語化してくれない、この記事最大の目玉となる解説だ。ネイティブの日常会話では、以下のような表現が信じられないほどよく使われる。
- from what I know(私の知る限りでは)
- from what I understand(私の理解では)
- from what I see(私が思うに、私が見る限りでは)
一見すると難しそうに見えるが、コアイメージで考えれば一瞬で理解できる。これらはすべて、「自分の知識(what I know)や理解(what I understand)を『判断の出発点(材料)』にして、意見を述べますよ」という共通のイメージで成り立っている。
「私の理解という場所を出発点にして話を組み立てると、こうなります」というニュアンスを、from が見事に表現しているのだ。
④ 原因を表す from(原因から結果が生まれる)
「原因」というのも、ある結果が生まれるための強力な「出発点」だ。from の後ろに原因を置くことで、「この原因から、こういう結果が生まれました」という綺麗な因果関係の図ができあがる。
| 英語表現 | 英語脳のイメージ(原因 ➔ 結果) |
|---|---|
| tired from work (仕事で疲れている) |
「仕事」が出発点となって、「疲労」という結果が生まれている。 |
| die from overwork (働きすぎが原因で死ぬ) |
「過労」という間接的な出発点から、徐々に「死」へと向かった。 |
| sad from the separation (別れが原因で悲しい) |
「別れ」という出来事が出発点になり、「悲しみ」の感情が湧き出ている。 |
| suffer from stress (ストレスに苦しむ) |
「ストレス」という源泉から、「苦しみ」が絶え間なく湧き出ている。 |
⑤ 離れる(分離・妨害)イメージになる from
「出発点から離れていく」という動きのイメージが強くなると、学校英語でややこしい熟語として習う「分離・妨害・保護」の意味が自然に生まれる。
absent from school(学校を欠席している)
意識の出発点である「学校」から、物理的・心理的にグッと「離れた場所にいる」からこそ、欠席という意味になる。
prevent A from doing(Aが〜するのを妨げる)
Aという人物を、これからやろうとしている行為(doing)という出発点から「引き離して、遠ざける」イメージだ。だから「妨げる・させない」という意味になる。
protect A from danger(Aを危険から守る)
Aを「危険(danger)」という恐ろしい場所から「引き離して安全な場所に置く」イメージ。だから「守る」という意味になる。
⑥ 違いを見決める「基準」になる from
初心者が最も「なるほど!」と納得するのが、この「区別」の用法だ。
- tell A from B(BとAを見分ける)
- know A from B(BとAを区別する)
- different from B(Bとは異なっている)
これらはすべて、「Bという対象を『判断の基準(出発点)』にして、そこからどれくらい離れているか、違っているか」を測定している絵になる。
双子の兄と波平を見分けるとき、まず「双子の兄(B)」を頭の起点(基準)に置き、そこから離れた特徴を持つ「波平(A)」を見つけ出す。だから、基準となるBの前に from が置かれるのだ。
⑦ 原料になる from(なぜ of ではないのか?)
最後に、よく試験で狙われる原料の from と材料の of の違いをスッキリさせよう。
- Wine is made from grapes.(ワインはぶどうから作られる)
- This table is made of wood.(このテーブルは木で作られている)
前回の記事で解説した通り、of は「切り離せない一体性(セット感)」を表す。テーブルを見たら「あ、木(wood)のままだな」と目で見て一体感がわかるから of を使う。
対して from は「出発点」だ。できあがった製品(ワイン)を見たとき、大元の出発点である「ぶどう」の形は跡形もなく消え去り、化学変化を起こして遠く離れてしまっている。「はるばる遠い出発点(原料)から加工されてここまで来た」という距離感があるからこそ、from が使われるのである。
まとめ|from は「〜から」ではなく「出発点・基準・原因」
ネイティブが頭の中で感じている from の世界観を一覧表で復習しよう。
| 実際の英語表現 | ネイティブが感じるイメージ |
|---|---|
| work from home | 「家」を起点にして、仕事を外へ発信している |
| from what I know | 自分の「知識」を判断の出発材料にしている |
| tired from work | 「仕事」という大元の原因から、疲労が生まれている |
| absent from school | 起点である「学校」から、物理的に離れている |
| tell A from B | 「B」を基準(起点)にして、Aを区別する |
| made from grapes | 原型を留めないほど「遠い原料(起点)」から変化してきた |
学校英語では「from = 〜から」と機械的に覚える。しかし、ネイティブが頭の中で思い浮かべているのは、決してそんな平坦な日本語の訳語ではない。
「あるものを出発点・基準・原因として、そこから意識やエネルギーが動き出す」という、たった一つのダイナミックなイメージだ。
このコアイメージを一度体に染み込ませてしまえば、work from home も from what I understand も、一見バラバラに見えた表現がすべて一本の線で繋がっていく。英語を日本語に置き換えて暗記するのをやめ、ネイティブと同じ絵を頭に浮かべること。これこそが、本当の「英語脳」への第一歩なのだ。
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