through の本当の意味は「〜を通して」ではない|ネイティブが使うコアイメージを英語脳で解説

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​前置詞throughのコアイメージを中心に、矢印がthe tunnel、the night、hard work、with herの4つの用法へ伸びている解説画像

学校の英語の授業で、前置詞 through は「〜を通して」「〜を通り抜けて」「〜の間ずっと」など、意味ごとにバラバラに暗記させられた人がほとんどではないだろうか。

たしかに、それらの訳自体は間違いではない。
しかし、実際の日常会話や海外のドラマを見渡してみると、次のような一見すると全く関係のない使い方ばかりが登場する。

through the tunnel(トンネルを通り抜けて)
through the night(一晩中)
through hard work(努力によって)
through experience(経験を通して)
through a friend(友人を通じて)
I’m through with her.(彼女とは終わりだ)

そのたびに「今回は『〜を通して』」「今度は『経験して』」「いきなり『終わり』ってどういうこと?」と日本語の訳語を当てはめて考えていては、いつまで経っても through の本質は見えてこない。

だが、ネイティブスピーカーは頭の中で日本語訳をいちいち選んでいるわけではない。彼らはthrough が持つ『たった一つの共通したイメージ』だけで、これらすべてを直感的に理解しているのだ。

この記事では、不自然な日本語訳を一度すべて忘れ、ネイティブが感じている through の世界を英語脳でわかりやすく解説する。読み終える頃には、初めて見る through の表現に出会っても、その意味を自然と推測できるようになっているはずだ。

この記事でわかること

  • through の本質である「入口から出口まで最後まで通り抜ける」感覚が掴める
  • 「空間」「時間」「経験」「手段」「終了」が一本の線に繋がる理由が理解できる
  • 似ていてややこしい「by と through」の違いに、もう一生迷わなくなる
  • 別れ話や禁煙で使う「I’m through with ~」の本当の意味が理屈で納得できる

through の本当の意味は「〜を通して」ではない

まず結論から言おう。日本語の「〜を通して」「〜を通り抜けて」というのは、文脈に合わせて後から作った訳語に過ぎず、through の本当の意味ではない。

単に「中にいる」状態を表す in とは異なり、through にはもっとダイナミックな動きがある。ネイティブが through という言葉を使うとき、頭の中に描いているのは、途中で止まることのない、非常にシンプルで力強い『ある一つの絵』なのだ。


through のコアイメージは「入口から出口まで最後まで通り抜ける」

ネイティブが感じている through の核心的なコアイメージ、それは「入口から入り、中を通り、出口最後まで完全に通り抜ける」という絵だ。

途中で止まることはない。最初から最後まで、一つのプロセス全体を完全に通過する。この「最後まで通り抜ける」というイメージさえ掴めれば、【空間 ➔ 時間 ➔ 経験 ➔ 手段 ➔ もう終わり】まで、すべてがドミノ倒しのように一本の線で繋がっていく。

さっそく、生きた例文とともに英語脳のシステムを紐解いていこう。


① 空間を通り抜ける through

まずは、最も基本となる物理的な「空間の通り抜け」から見てみよう。トンネルのような筒状のオブジェクトをイメージすると分かりやすい。

  • We are driving through a long tunnel.(車で長いトンネルを抜けている)
  • walk through the forest(森を歩いて通り抜ける)
  • They went through the kitchen to the room.(彼らはキッチンを通り抜け、部屋へ入った)
  • She came through the window.(彼女は窓を通り抜けてやってきた)

これらはすべて、対象となる空間の「入口」から入って、その「内部」を貫き、「出口」から外へ出るという一連の動きそのものを表している。


② 時間を通り抜ける through

空間の通り抜けができるなら、当然「時間」というトンネルを通り抜けることもできる。時間を最初から最後まで通過するという感覚だ。

  • through the night(一晩中 ➔ 夜の始まりから、夜が明ける出口まで)
  • all through the year(一年中ずっと ➔ 1月1日から12月31日の出口まで)
  • He studied hard all through the summer.(彼は夏の間中ずっと勉強した)

「その時間の始まりから終わりまで、途切れることなく通り抜けた」という、強い継続のニュアンスが含まれるのが特徴だ。


③ 経験・試練・プロセスを通り抜ける through

さらに抽象度を上げると、人生の「経験」や「試練」という長いプロセスを通り抜ける表現になる。ここも、単に経験したという事実だけでなく「そのプロセスを自らの足で抜けた」という説明がしっくりくる。

  • go through difficulties(困難を経験する、苦難のトンネルをくぐり抜ける)
  • go through many problems(多くの問題を経験する、乗り越える)
  • get through the exam(試験を通過する、突破する)

辛い時期や、険しい試験という名の長いトンネルに突入し、そこを耐え抜いてようやく出口から外へ出た、という達成感がこの through には込められている。


④ 手段・媒介になる through

物や人、システムを「経由するルート(途中の経路)」として扱い、そこを通過して結果へ至る場合にも through が使われる。日本語の「~を通じて」に最も近い感覚だ。

  • I got to know my wife through my friends.(私は友人を通じて妻と知り合った ➔ 友人を経路として通過した)
  • I made a reservation through the internet.(インターネットで予約をした ➔ ネット網を通過して完了した)
  • He got the information through the government authorities.(彼はその情報を政府当局を通じて得た)

情報や結果が、その人やシステムという「中」を通って、自分の元へ届いたという経路のイメージだ。


💡 独立解説:by と through の決定的な違い

ここで、多くの英語学習者が最も迷う「手段の by」と「経路・プロセスの through」の違いをスッキリさせておこう。どちらも日本語では「〜によって」「〜で」と訳せてしまうため混同されがちだが、イメージは全く異なる。

前置詞 コアイメージ ネイティブの感覚
by 架け橋を渡る 既存の「手段・仕組み」に近寄って・乗っかって結果を出す(受動的)
through トンネルを抜ける その「プロセス・経路」の中を自ら通り抜けて結果を出す(能動的)

分かりやすい例を見てみよう。

I made a reservation by phone.(私は電話で予約した)
➔ 「電話」という既存の通信システム(仕組み)を媒介としてサクッと利用した感覚。

I succeeded through hard work.(私は一生懸命働いて[努力によって]成功した)
➔ 努力(hard work)という、長く険しいプロセス(トンネル)の中に自ら飛び込み、自らの足で最後まで通り抜けた結果として成功を掴み取った感覚。

このように、「本人が能動的に行動し、そのプロセスを通過した」というニュアンスがある場合は、by ではなく through が選ばれる。だからこそ、“I got rich through hard work.”(一生懸命働いてお金持ちになった)が正解になるのだ。


⑤【ヤヌス流オリジナル】「もう終わり」を表す through の秘密

最後に、一般的な辞書サイトではあまり深く扱われていない、日常英会話で非常によく使う重要な表現を解説しよう。

海外ドラマなどで、以下のようなセリフを聞いたことはないだろうか。

  • I’m through with her.(彼女とはもう終わりだ)
  • I’m through with this job.(この仕事はもう辞める)
  • I’m through with smoking.(私は禁煙した)

学校英語の知識しかないと、「通り抜ける」という言葉がなぜ「別れ話」や「禁煙」という『終了・決別』の意味になるのか、全く理解できないはずだ。

しかし、これもコアイメージを使えば一発で氷解する。
ネイティブにとって、これらは「縁を切る」というトゲトゲした感覚ではない。「その関係や仕事、習慣という名のプロセス(トンネル)を、最初から最後まで最後まで通り抜け、そのプロセスの外へ完全に出た」という状態を指しているのだ。

つまり I’m through with〜 は、「もう嫌だから捨てる」という感覚ではない。最後までその期間・関係・経験を終え、その外へ出た。ネイティブはその”通過後の状態”を through で表しているのである。

ネイティブは、頭の中で日本語訳を選んでいるわけではない。ただ一枚の絵――「入口から出口まで最後まで通り抜ける」というイメージだけで、through のすべてを理解している。

英語脳とは、単語を訳すことではなく、ネイティブと同じ絵を見ることなのである。


まとめ|through は「〜を通して」ではなく「最後まで通り抜ける」

ネイティブが頭の中で感じている through の世界観を一覧表で復習しよう。

実際の英語表現 ネイティブが感じるイメージ
through the tunnel トンネルの中を、入口から出口まで通り抜ける
through the night 夜という時間的なトンネルを最後まで過ごす
through hard work 努力という険しいプロセスを、自ら最後までやり抜く
through a friend 友人という「途中の経路」を通過して繋がる
I’m through with her. その関係というプロセスを最後まで終えて外に出る

学校英語では「through = 〜を通して」と機械的に教わる。しかし、ネイティブが頭の中で思い浮かべているのは、そんなお決まりの日本語訳ではない。

「入口から出口まで、一つのプロセスを最後まで通り抜ける」という、美しく論理的な一つのイメージだ。

このコアイメージを一度手に入れてしまえば、一見ややこしい by との使い分けも、ドラマで出てくる別れ話のフレーズも、すべてが一本の線で自然と繋がっていく。英語を日本語に置き換えて暗記するのをやめ、彼らと同じ絵を頭に浮かべること。これこそが、本当の「英語脳」への確実な一歩なのだ。

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