学校英語では、前置詞 around を「〜の周り」「約〜」「あちこち」と習った人がほとんどではないだろうか。
もちろん、それも間違いではない。
しかしネイティブの日常会話では、日本語訳だけでは説明できない表現が次々に現れる。
- Ask around.(いろいろな人に聞いてみて)
- Hang around.(その辺をぶらぶらする)
- Fool around.(ふざける・遊び回る)
- Around the clock.(24時間ぶっ通しで)
- It’s around 3 o’clock.(3時ごろ)
- That restaurant has been around for years.(あの店は昔からある)
「なぜ『周り』が『聞いて回る』になるの?」
「なぜ『周り』が『24時間』になるの?」
「なぜ『周り』が『昔から存在している』になるの?」
学校英語のように日本語訳だけを暗記していては、これらはすべて別々の表現に見えてしまい、丸暗記の限界がやってくる。
しかしネイティブは、これらを別々に覚えているわけではない。
彼らの頭の中には、たった一つのシンプルなコアイメージしか存在していないのである。
この記事では、日本語訳を一度忘れ、ネイティブが around に感じている「中心のまわりへ自由に広がる世界」という英語脳を、豊富な図解とともに解説していく。
読み終える頃には、初めて見る around の表現に出会っても、日本語ではなく映像で理解できるようになっているはずだ。
- around の本当のコアイメージ
- around が「約」になる理由
- ask around の意味
- hang around の意味
- fool around の意味
- around the clock の意味
- be around の本当のニュアンス
- about との違い
around の本当の意味は「〜の周り」ではない
① 中心のまわりへ自由に広がる around(基本イメージ)
around の本当のコアイメージは、「中心のまわりへ自由に広がり、存在し、動き回る世界」である。
★ ★
○(中心) ★
★ ★
(中心を取り囲みながら、自由に存在・移動・広がる)
この「中心の周囲を自由に動き回る・存在している」という感覚が、のちに紹介する様々なイディオムへ繋がっていく。ここで、よく混同される about との違いについて軽い伏線を張っておこう。about は「ある対象のすぐ近くに張り付いている」感覚だが、around は「中心のまわりを自由に動き回るダイナミックさ」を持っている。この違いが、のちに大きな意味の差を生むことになる。
② around は「約」ではなく「周辺」(時間・数字)
学校英語で習う「around = 約」という訳も、コアイメージから見れば一瞬で納得がいく。
It’s around 3 o’clock.(3時ごろ)
2:50
\
3:00(中心)
/
3:10
【It's around three. の世界】
ネイティブの頭の中では、「3:00」という厳密な一点ではなく、その中心の「周辺」にある2:50〜3:10といった不確定な範囲をぐるりと見渡している景色が浮かんでいる。これは「around 300 people(約300人)」という数量の表現でも全く同じだ。「300」という中心の数字の周辺に、自由に点在しているイメージなのである。
③ Ask around(今回の山場①)
日常会話やビジネスでも頻出するこの表現。直訳の「周りに尋ねる」が、なぜ「色々な人に聞いて回る」になるのだろうか。
Ask around.
自分が中心に立ち、特定の誰か一人だけに聞くのではなく、自分の「周囲にいる不特定多数の人々」へ向かって次々に声をかけていく(聞いて、聞いて、聞いて回る)映像。まさに中心から周囲へ自由に広がる around の感覚そのものである。
日本語で言う「訊いて回る」に近い。
④ Hang around
「その辺をぶらぶらする」という意味でお馴染みの表現だが、これもイメージの力で丸暗記を脱却しよう。
Hang around. / Lounge around. / Sit around.
特定の目的に向かって直進するのではなく、ある特定の場所(中心)の周辺に、明確な目的もなくプカプカと浮いて居続けている(hang = 吊り下がっている)状態を表している。だからこそ「特に何をするでもなく、その辺に居座ってぶらぶらする」という意味になるのだ。
これが分かれば walk around の意味も自ずからわかる。例えば、walk around the city は「街をうろつく」と瞬時に理解できると思う。
⑤ Fool around / Joke around
この表現の繋がりこそ、前置詞コアイメージの真骨頂であり、最も面白い部分である。
Fool around.
一つの真っ直ぐな目標に向かって進むのではなく、話題や行動が中心から外れて「あちこちへランダムに飛び跳ねている」映像を想像してほしい。
物事を真面目に進めず、意識があちこちへ飛んでいるから「ふざける」になり、そこから「遊び回る」、さらには大人の会話では「(特定のパートナー以外と)いちゃつく・浮気する」という意味にまで一本の線で繋がっていくのである。
こういった around のコンセプトが分かれば、ネイティブが多用する次の表現も感覚的にすぐに理解できるはずだ。
look around. (見回す)
turn around. (振り返る)
⑥ Around the clock(今回の山場②)
「24時間ぶっ通しで」「昼夜を問わず」という意味の非常に格好いい表現だ。
We are working around the clock.
🕒 ぐるっ ぐるっ ぐるっ (時計の周囲を何度も回る)
時計(clock)という中心のまわりを、時針がぐるっと一周、また一周と、何度も終わりなく回り続けているダイナミックな映像が頭に浮かぶだろうか。時計の周囲を回り続ける=時間が途切れることなく循環している感覚から、「24時間ぶっ通しで営業・作業している」という力強い表現が生まれるのである。
この感覚で時間ではなく場所を入れるとこうなる。
travel around the world (世界中を旅する)
spread around the world(世界中に広がる)
⑦ Be around
「存在する」という意味で使われる around も、ネイティブらしい深いニュアンスが隠されている。
The company has been around for years.(あの会社は昔からある)
He’s still around.(彼はまだ健在だ / 近くにいる)
この世界(社会や業界という空間)の中心に、その存在がずっと消えずに「周囲にあり続けている」という映像。ここから、「昔から存在している」「まだ引退せずに健在だ」「(物理的に)すぐ近くの空間にいる」という意味まで、すべて「存在があり続ける」という一本の感覚で説明ができる。
同様に、上の感覚を手にすると、次の英文の理解はたやすい。
He’s around. (彼はその辺にいるよ)
He’s still around. (彼はまだその辺にいるよ)
Is Tom around? (トムはまだいる?)
⑧ around と about の決定的な違い
最後に、検索需要が非常に高い about と around の違いを、ヤヌス流の明確な映像でスッキリと完結させよう。
| 前置詞 | ネイティブが見ている世界 |
|---|---|
| about | 一つの対象の周辺にピタッと意識を向ける(静的・安定的) |
| around | 中心の周囲へ自由に広がり、動き回る世界(動的・アクティブ) |
例えば、talk about education(教育について話す)という場合、「教育」というテーマにピタッと意識の照準を合わせてその周辺を深く議論しているイメージになる。
一方で、walk around town(町を歩き回る)という場合、町という中心からあちこちへ「自由に広がり、動き回る」アクティブな動きになる。
「約」という数字の幅においても、about より around の方が「自由に広がる」ぶん、少し大雑把で広い範囲を指す傾向があるのも、このコアイメージの違いによるものだ。
まとめ|around は「中心のまわりへ自由に広がる世界」
前置詞は日本語訳で覚えるほど増えていきます。しかしコアイメージで覚えるほど、一つにまとまっていきます。
最後に、今回解説したネイティブの感覚を一覧表で復習しよう。
| 表現 | ネイティブが感じる映像 |
|---|---|
| around the house | 家の周辺の空間に、自由に存在している |
| around 3 o’clock | 3時という中心の一点の周辺にある、ざっくりとした時間帯 |
| ask around | 自分の周囲にいる人たちへ向かって、自由に聞いて回る |
| hang around | ある場所の周辺に、目的なくプカプカと居続ける |
| fool around | 行動や意識が真っ直ぐ進まず、あちこちへ自由に飛び跳ねる(ふざける) |
| around the clock | 時計の文字盤の周囲を、針が何度も繰り返し回り続ける(24時間) |
| be around | この世界・空間の中に、その存在が消えずにずっとあり続ける |
前置詞の「日本語訳」を捨てて、ネイティブの「英語脳」を手に入れる大好評シリーズです。点と点が線で繋がる感覚を、ぜひあわせてお楽しみください。
- among の本当の意味は「〜の中」ではない|ネイティブが使う英語脳のコアイメージを解説
- off の本当の意味は「離れる」ではない|ネイティブが使う英語脳のコアイメージを解説
- down の本当の意味は「下」ではない|ネイティブが使う英語脳のコアイメージを解説
- up の本当の意味は「上」ではない|ネイティブが使う英語脳のコアイメージを解説
- between の本当の意味は「〜の間」ではない|ネイティブが使う英語脳のコアイメージを解説
- across の本当の意味は「横切る」だけではない|ネイティブが使う英語脳のコアイメージを解説
- below の下」ではない|ネイティブが使う英語脳のコアイメージを解説
- under の本当の意味は「〜の下」ではない|ネイティブが使う英語脳のコアイメージを解説
- through の本当の意味は「〜を通して」ではない|ネイティブが使う英語脳のコアイメージを解説
- by の本当の意味は「〜によって」ではない|ネイティブが使う英語脳のコアイメージを解説
- over の本当の意味は「〜の上」ではない|ネイティブが使う英語脳のコアイメージを解説
- from の本当の意味は「〜から」ではない|ネイティブが使う英語脳のコアイメージを解説
- of の本当の意味は「〜の」ではない|A of B が成立する条件を英語脳で理解する
- with の本当の意味は「〜と一緒に」ではない|ネイティブが使う英語脳のコアイメージを解説
- to の本当の意味は「~に」ではない|ネイティブが使う英語脳のコアイメージを解説
- for の本当の意味は「〜のために」ではない|ネイティブが使う英語脳のコアイメージを解説
- on の本当の意味は「〜の上」ではない|ネイティブが使う英語脳のコアイメージを解説
- in の本当の意味は「〜の中に」ではない|ネイティブが使う英語脳のコアイメージを解説
- at の本当の意味は「〜に」ではない|ネイティブが使う英語脳のコアイメージを解説
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