この記事を読んでいるあなたは、日本語が話せる。そして、日本語を読める。
では、ちょっと考えてみてほしい。
あなたは、日本語を勉強したから日本語が話せるようになったのだろうか?
もちろん、学校で国語を勉強した。漢字も覚えた。文法も勉強した。文章の読み方も学んだ。
しかし、それは「日本語を話せるようになった後」の話ではないだろうか。
私たちは、もっとずっと前から日本語を聞いていた。
赤ちゃんの頃、お母さんやお父さんが話す言葉を聞いた。意味など分からない。文法も知らない。単語帳も持っていない。
それでも、毎日毎日、日本語の音を聞いていた。
やがて、その音が人や物、動き、感情、状況と結びついていく。
「ママ」「おいしい」「熱い」「行く」「ちょうだい」――。
そうやって、私たちの中に少しずつ日本語の言語脳が作られていった。
つまり私たちは、まず「日本語について勉強した」のではない。日本語を聞き、見て、感じて、経験することで、日本語を使うための脳の回路を作っていったのである。
ところが、英語になると話が変わる。
すでに日本語の言語脳が出来上がっている私たちは、英語を日本語を通して理解しようとする。
英語を聞く。
↓
日本語に訳す。
↓
意味を理解する。
↓
答えを考える。
↓
英語を組み立てる。
これでは、会話のスピードについていけない。
私は50年間、英語を学び続けてきた。
そして長い年月をかけて、あることに気づいた。
英語を話せるようになるために本当に必要なのは、英語の知識を増やし続けることだけではない。
すでに知っている英語を、頭で考えてから使う「知識」から、場面を見たり、英語を聞いた瞬間に反応できる「反射」へと変えていくことではないか。
これが、私が「英語脳構築」と呼んでいる考え方である。
では、英語脳とは何なのか。
そして、日本語脳がすでに出来上がった大人は、どのようにして英語の回路を作っていけばいいのか。
この記事では、50年間の英語学習から私がたどり着いた「英語脳構築」の道筋を、これまで作ってきた教材シリーズの設計思想とともに説明していきたい。
- 大人が英語脳を作るための根本的な考え方
- なぜ「知っている英語」が口から出てこないのか
- 学校英語と「会話の反射神経」の明確な違い
- 簡単な英語を反復練習することに隠された真の理由
- 英語脳構築講座シリーズ全編が一本の線でつながる設計思想
私たちは、どうやって日本語を身につけたのか?
赤ちゃんは文法を知らない
生まれて間もない赤ちゃんは、英文法はもちろん、日本語の文法など一切知らない。単語帳も辞書も持っていないし、日本語を別の言語に翻訳して理解しているわけでもない。
それでも、目の前の情景とともに日本語の音を毎日浴び続けている。
「音」と「映像」から始まる言語習得
私たちが日本語のような音声言語を身につけるとき、その入口になるのが「音」と「映像」だ。
音と人・物・動き・状況が結びつき、そこから意味のネットワークが育っていく。
赤ちゃんはこの順序で言葉を吸収していく。「ワンワン」という音と四本足で走る動物の映像が合致し、「おいしい」という音と口の中に広がる感覚が結びつく。文法の解説なしに、音と現象がダイレクトに脳内で連結されているのだ。
事実、お母さんやお父さんが犬をワンワンと言えば、赤ちゃんは犬という言葉の前に犬をワンワンと理解する。同様に、周りの大人が猫をニャンニャンと言えば、赤ちゃんは猫のことをニャンニャンと理解する。
成長するにつれて「音・映像・状況・経験」が結びついていく
言葉とは、単語帳の上で単独で記憶するものではない。
本来、言葉はこうした「現実世界における状況や経験との結びつき」の中で、身体に馴染み、自分の言葉として育っていくものと私は考えている。
合わせて読んでおきたい記事👇️
👉️ なぜ幼児は文法を知らなくても話せるのか|私が50年の英語学習で辿り着いた結論
ところが、大人の英語学習は「母語の習得」とまったく違う
すでに日本語脳が出来上がっている
大人になってから英語を学ぶ場合、赤ちゃんと決定的に異なる点がある。それは「すでに日本語脳が強固に完成している」ということだ。
そのため、英語の音や文字に触れた瞬間、無意識のうちに以下の処理を行ってしまう。
英語 ➔ 日本語に翻訳 ➔ 意味の理解
脳内に完成された「日本語というフィルター」をわざわざ経由して英語を処理しようとするのだ。
「英語を理解する」ことと「英語に反応する」ことは違う
例えば、目の前に次のような英文があったとする。
“Take your time.”
これを見れば、多くの人が「ごゆっくりどうぞ」という意味だと理解できるだろう。しかし、実際の英会話の中で相手から突然これを言われたとき、あるいは自分が相手に「ごゆっくりどうぞ」と言いたい場面に直面したとき、瞬間的に言葉が出てくるだろうか?
ここに大きな落とし穴がある。
「知っている(理解できる)」ことと、「瞬時に使える(反応できる)」ことは、まったく別の能力なのだ。
日本の学校英語は、何を鍛えてきたのか?
英文を分析して正解を出す能力
ここで誤解のないように言っておきたいが、私は日本の学校英語教育を頭ごなしに否定するつもりはない。
学校で学ぶ文法知識、単語力、長文読解、和訳のトレーニングには、英文を正確に分析し、論理的な正解を導き出すための素晴らしい土台がある。
しかし「会話の反射神経」は別の能力
ただし、学校英語が得意としてきたのは「時間をかけて分析する能力」であって、「瞬時に反応する能力」ではない。リアルタイムの会話では、こうした処理をほとんど間を置かずに繰り返さなければならない。
聞く ➔ 場面・意味をダイレクトに掴む ➔ 反応を判断する ➔ 口から出す
テストで高得点を取るための「英語の知識を増やす学習」をどれだけ続けても、この「会話の反射神経」は自然には育たないのだ。
「知っている英語」を「使える英語」に変える
初心者に必要なのは、必ずしも新しい英語ではない
私が長年主張し続けている持論がある。
それは、「知らない難解な英語を100個増やす前に、すでに知っている簡単な英語を100回使えるようにするべきだ」ということだ。
会話が続かない原因の多くは、難しい単語を知らないからではない。知っているはずの基本動詞や短いフレーズが、必要な瞬間に口から飛び出してこないことにある。
簡単な英語を繰り返す理由
私の教材を見た人の中には、「なんだ、使われている英文が拍子抜けするほど簡単じゃないか」と感じる人もいるかもしれない。
しかし、それこそが狙いなのだ。
複雑で難しい英文では、どうしても脳が「文法的に正しいか」を分析し始めてしまう。頭での分析を挟ませず、条件反射のように口から出せる状態(反射化)を作るには、徹底的に削ぎ落とされたシンプルな英語でなければならない。
「使える英語」を「会話で使える英語」にする
一つの英文を言えるだけでは会話にならない
単発の英文を一つ言えるようになったとしても、それだけでは会話は成立しない。
例えば、相手から“How are you?”と聞かれて “I’m tired.” と答える。英文としては完璧だ。しかし、そこで黙り込んでしまえば会話は終了してしまう。
“I’m tired. How about you?” と聞き返したり、“I’m tired. I had a long day.” と一言付け加えたりして初めて会話は動き出す。
「点」から「線」へ
一言で終わる英語は「点」だ。
英会話に必要なのは、表現と表現をスムーズにつなぎ合わせて流れを作る「線」の思考である。
点(単発の発言) ➔ 線(反応 ➔ 付け加え ➔ 質問という流れ)
この「線を引く訓練」をして初めて、知っている英語が「会話で使える英語」へと進化する。
この「点から線へ」の練習を、10の身近な会話場面で実践できるようにしたのが、第6弾④です。👇️
👉️ 【実践編・第6弾④】知っている英語を「会話で使える英語」に変える|表現をつないで話す10トレーニング
そして、英語脳構築の方向を逆転させる
「英文 ➔ 画像」だけではなく「画像 ➔ 英文」へ
これまで私の講座では、「英文を聞く・見る ➔ 頭の中に場面や映像を思い浮かべる」というトレーニングを重点的に行っていただいた。
しかし、実際の生活や会話の中で私たちが直面するのは、それとは逆のプロセスだ。
目の前に場面(現実)がある ➔ 言いたい感覚が立ち上がる ➔ 英語が反射的に出る
映像・場面から英語を引き出す
日本語で考えてから英訳するのではなく、「目の前の情景やイラスト」を見た瞬間に、直接英語のフレーズを引き出す。
この「逆方向の回路」を鍛えることで、日本語を介さずに「場面・映像」と英語を直接結びつける力を、さらに強くしていくことができる。
だから、私の「英語脳構築講座」は一見すると簡単に見える
簡単な英語を使っているのには理由がある
もうお分かりいただけただろう。
私の「英語脳構築講座」で難解な英文を扱わないのは、知識を誇るための教材ではないからだ。
知識として「理解させる」ためではなく、簡単な表現を「反射的に処理できる脳内回路」を構築するためだけに特化して設計しているからである。
第1弾から現在まで、すべて一本につながっている
これまでリリースしてきた実践編シリーズは、決して思いつきでテーマを選んできたわけではない。すべて大人の英語脳を段階的に組み立てるための綿密なステップに基づいている。
- 第1弾:英文から場面・映像を結びつける基礎回路
- 第2〜4弾:感情や動きを英語のまま捉える感覚の拡張
- 第5弾:ネイティブ特有の即答リアクション力の注入
- 第6弾(①〜③):知っている基本表現を口から出す反射化
- 第6弾④:表現をつなげて「会話の流れ(線)」を作る訓練
- 第7弾:映像・場面からダイレクトに英文を引き出す逆方向回路
私が考える「英語脳」とは何か?
ここで改めて、私が考える「英語脳」の定義をはっきりと示しておきたい。
英語脳とは、決して「英語の単語や文法を膨大に暗記している状態」のことではない。
英語の音や場面に触れた際、日本語に翻訳することなくダイレクトに意味や感覚が立ち上がり、必要な英語が反射的に口から飛び出す状態のことだ。
その状態に至るまでには、以下の明確なステップが存在する。
知識 ➔ 理解 ➔ 反応 ➔ 発話 ➔ 自動化(反射)
多くの学習者は「理解」の段階で止まってしまい、一番重要な「反応 ➔ 発話 ➔ 自動化」のトレーニングを圧倒的に不足させているのだ。
英語脳は「特別な才能」ではなく、鍛えることができる
「英語脳なんて、幼少期に海外で育った人(帰国子女)や、若くて柔軟な脳を持っている人、言語の才能がある人にしか作れないのではないか」
そう諦めている人がいたら、私はハッキリと「それは違う」と伝えたい。
正しい方向性と設計に基づいた反復を行えば、大人になってからでも、英語を処理する回路を少しずつ育てていくことはできる。才能の有無だけで決まるものではなく、「反射化させるためのトレーニングをどれだけ行ったか」という違いも大きい。
50年間英語を学んできた私が、最後にたどり着いたこと
私自身、50年という長い歳月を英語学習に費やしてきた。
若い頃は膨大な単語帳を暗記し、分厚い文法書を読破し、難解な論文を解読することに没頭した時期もある。しかし、いざ実際の現場でネイティブと対峙したとき、頭が真っ白になり言葉が出てこない悔しさを何度も味わった。
「これほど勉強してきたのに、なぜ一言も返せないのか」
その苦悩の果てにたどり着いた答えが、「足りなかったのは知識ではなく、知識を反射に変える訓練だった」という真実である。
私の教材は、ただ知識としての英語を教えるためのものではない。すでに日本語脳が出来上がった大人が、英語を日本語に翻訳する癖を脱ぎ捨て、英語を英語として反射的に処理するための脳内回路を作る。そのためのトレーニング教材である。
英語脳構築講座の全体像
本講座シリーズは、各段階で「何についての知識を学ぶか」ではなく、「脳のどの回路を鍛えるのか」を目的として構成されている。
| シリーズ | 本講座で鍛える「脳の回路」 |
|---|---|
| 【第1弾】 | 英文と映像・感覚をダイレクトに結びつける「直結回路」 |
| 【第2〜4弾】 | 進行形・過去分詞・感情表現を英語のまま映像化する「感覚拡張回路」 |
| 【第5弾】 | 相手の発言に対して無意識に第一声が出る「即答リアクション回路」 |
| 【第6弾①〜③】 | 知っている基本英語を頭で考えずに口から出す「反射化回路」 |
| 【第6弾④】 | 単発の言葉を会話の流れへとつなげていく「接続・展開回路」 |
| 【第7弾】 | 目の前の情景・場面から直接英語を引き出す「場面抽出回路」 |
英語を「知っている」から「反応できる」へ
もしあなたが「長年英語を勉強しているのに、一向に話せるようにならない」と悩んでいるなら、自分を責める必要は一切ない。
あなたの英語力が低いからでも、記憶力が衰えたからでもないのだ。
ただ単に、知識を増やす作業ばかりに時間を使ってしまい、「知っている英語を反射化するトレーニング」に出会えていなかっただけなのだから。
英語脳は、一夜にして完成する魔法ではない。
しかし、正しい方向性と設計に基づいた反復を行えば、誰であっても、何歳からであっても、確実に脳内に作っていくことができる。
私はその道筋を、自分自身の50年の試行錯誤から導き出し、この「英語脳構築講座」という形にまとめた。
知識の壁を突き抜け、英語が反射的に口から飛び出す感覚を、ぜひあなたにも体験してみてほしい。
【英語脳構築講座】実践編シリーズ一覧
これまでの実践編シリーズはこちらからご覧いただける。
運営者ヤヌスの心からのメッセージ
英語は「知識」ではなく「反射」です。
理解しただけでは話せるようにはなりません。
本当のゴールは“瞬時に口から出る状態”です。


コメント