英語脳シリーズ⑤
シリーズ①では現在分詞、シリーズ②では過去分詞、シリーズ③では関係代名詞、シリーズ④では名詞節を取り上げてきた。
どの記事でも共通していたのは、
「英語とは、決められた場所へ情報を代入しながら広がっていく言語である」
という事実だった。
では、学校英語でも多くの人が苦手意識を持つ不定詞(to+動詞の原形)はどうだろうか。
学校では、
- 名詞的用法
- 形容詞的用法
- 副詞的用法
という3種類を丸暗記させられる。
しかし、ネイティブはそんな分類を頭の中で考えながら話してはいない。
実は、不定詞もこれまで見てきた現在分詞や関係代名詞と何一つ変わらない。
同じ「to+動詞」というパーツを、違う場所へ代入しているだけ。
今回も難しい文法用語は必要ない。
たった数個の例文を眺めるだけで、
「不定詞って、こんなに簡単だったのか!」
という爽快感を味わってほしい。
- 不定詞が難しく感じる本当の理由
- 名詞的・形容詞的・副詞的用法が実は同じ仕組みである理由
- 「代入」の発想で不定詞を見る方法
- 名詞節との共通点
- 英語脳は「代入する脳」である理由
学校英語では不定詞だけ突然3種類になる
なぜ急に分類が増えるのか
学校英語の教科書を開くと、不定詞の章に入った途端に「名詞的用法」「形容詞的用法」「副詞的用法」という3つの重苦しい扉が現れる。「これは形容詞的に名詞を修飾していて……」といった文法解説を聞くたびに、英語が数式の羅列のように見えてきてフリーズしてしまうのだ。
ネイティブは分類していない
しかし、ネイティブの頭の中には「3つの用法」などという引き出しは存在しない。彼らにとって、不定詞はどこまでいっても「to + 動詞の原形」という1つの共通パーツにすぎない。
「置く場所」が違うだけ
では、なぜ日本語に訳すときに3種類に化けてしまうのか。その答えこそが「代入」だ。パーツの形は同じなのに、それを放り込む「脳内の箱(スペース)」が違うだけなのである。ここから、3つの例文を通してその感覚をリアルに体感していこう。
例文①:名詞の箱へ代入する(名詞的用法)
まずはすべてのスタートライン、一番シンプルな基本の型から始めよう。ネイティブが「want」と言った瞬間、その頭の中には「[何か(名詞)]が欲しいな」という空箱が用意される。
I want [ ].
この空箱に、まずは普通の単語(名詞)をポンと代入してみる。
I want coffee.(コーヒーが欲しい)
当然、何の問題もない。では、この「coffee」が入っていた箱とまったく同じ場所へ、今度は「to play tennis(テニスをすること)」という不定詞のパーツを丸ごと代入してみよう。
I want [ to play tennis ].
↓
和訳:「私はテニスをすることがしたい(テニスをしたい)」
学校英語ではこれを「名詞的用法」と呼ぶが、ネイティブの脳内で行われているのは、名詞が入るべき箱に不定詞パーツをコロンと代入しただけ。例文④の「I know that…」の箱とも完全に同じ場所なのである。
例文②:名詞の後ろへ代入する(形容詞的用法)
次は、代入する「場所」を少し変えてみよう。今度は、すでにある名詞の後ろにあるスペースに不定詞を代入する。
I have something.
これだけでも文としては成立するが、ネイティブの脳内では「something」の直後に、「どんな何か(名詞の説明)」を付け足すための代入スペースが自動的に用意されている。
そのスペースへ、「to tell you」という不定詞パーツを代入するのだ。
I have something [ to tell you ].
↓
和訳:「あなたに話すべきことがある(話したいことがある)」
お気づきだろうか。この「名詞の後ろにパーツを代入して詳しく説明する」という動きは、本シリーズで嫌というほど登場してきた「現在分詞(①)」「過去分詞(②)」「関係代名詞(③)」と完全に同じ動きなのだ。放り込むパーツが不定詞に変わっただけで、脳内のパズルの形は1ミリも変わっていない。
例文③:文全体へ代入する(副詞的用法)
最後は、すでに完成している文章の「外側(後ろ)」へ、目的や理由を代入するパターンだ。
I study English.
これだけで完璧な文章だ。しかしネイティブは、この完成した文の後ろに「〜するためにね」という、おまけの情報を付け足す箱を用意する。
そこへ、「to travel abroad」という不定詞パーツをポンと代入する。
I study English [ to travel abroad ].
↓
和訳:「海外を旅するために、私は英語を勉強している」
学校英語では「副詞的用法」などと大層な名前がついているが、やっていることは「完成した文の後ろに、目的を表すパーツを付け足して代入しただけ」なのである。
長くなっても「置く場所」は変わらない
ここまで3つの変化を体験してみて、どう感じただろうか。文章がどんなに長くなろうとも、すべての英文はあらかじめ用意された「箱(型)」にパーツを代入しているだけだ。前回の名詞節も合わせて、一度すっきりと整理してみよう。
| 基本の型 | 代入されたもの(名詞の箱の中身) |
|---|---|
| I want [ ] | coffee |
| I want [ ] | to play tennis |
| I know [ ] | that he is honest |
| I know [ ] | what he wants |
ご覧の通りだ。入っている中身の長さや種類が違うだけで、ネイティブから見れば「すべて同じ名詞の箱( [ ] )にパーツを放り込んでいるだけ」。これが英語の本質なのだ。
現在分詞・過去分詞・関係代名詞・名詞節・不定詞は全部つながっている
ここで、シリーズ①から今回の⑤までを駆け抜けてくれたあなたに、この英語脳シリーズ最大の「大統一理論」の全貌をお見せしたい。学校英語でバラバラに習うすべての重要文法が、ネイティブの脳内でどう処理されているかの一覧だ。
| シリーズ | 代入される場所 |
|---|---|
| ① 現在分詞 | 名詞の後ろ |
| ② 過去分詞 | 名詞の後ろ |
| ③ 関係代名詞 | 名詞の後ろ |
| ④ 名詞節 | 動詞の後ろ |
| ⑤ 不定詞 | 置く場所が変わるだけ |
何百ページもの参考書に分かれて登場する別々の単元が、ネイティブの頭の中では「どこへ、何を代入するか」という、たった一つのシンプルなパズルとして美しく統合されている。読者のみなさんにも、「全部同じパズルだったんだ」という感覚を掴んでもらえたはずだ。
英語脳は「分類する脳」ではなく「代入する脳」
ネイティブスピーカーは、英文を組み立てるときに「これは名詞的用法だから……」などという分類は1ミリも考えていない。
彼らにあるのは、強固な「型」の感覚だけだ。
頭の中にあるのは、「この場所(空箱)へ、今から何を入れる?」というシンプルな意識のみ。英語脳とは、文法ごとに頭を切り替えて綺麗に分類する脳ではなく、この「代入のパズル」を高速で使い回せる脳のことなのである。
以下に、執筆済の英語脳シリーズ一覧を載せる。
👉️ 学校英語では絶対わからない|英会話は「代入」で無限に話せるようになる英語脳の仕組み【英語脳シリーズ①】
👉️ 学校英語では絶対わからない|過去分詞も「代入」で無限に広がる英語脳の仕組み【英語脳シリーズ②】
👉️ 学校英語では絶対わからない|関係代名詞も「代入」で無限に広がる英語脳の仕組み【英語脳シリーズ③】
👉️ 学校英語では絶対わからない|名詞節も「代入」で無限に広がる英語脳の仕組み【英語脳シリーズ④】
👉️ 学校英語では絶対わからない|動名詞は不定詞と何が違うのか。「代入」で理解する英語脳の仕組み【英語脳シリーズ⑥】
👉️ 学校英語では絶対わからない|前置詞句は「意味」ではない。”代入”で理解する英語脳の仕組み【英語脳シリーズ⑦】
まとめ:不定詞は一種類しかない
学校英語では3種類に分類され、私たちを悩ませてきた不定詞。しかし、不定詞は3種類ではない。
英語脳の視点で言えば、to+動詞という一つのパーツを、違う場所へ置いているだけ。
違うのは、代入先だけ。
「to + 動詞の原形」というたった1つの便利な万能パーツを、名詞の箱に入れるか、名詞の後ろに入れるか、文の最後に入れるか。違うのは「場所」だけなのだ。この感覚さえ掴んでしまえば、不定詞のパズルは一瞬で解けるようになるだろう。
👉️ 関連記事:私がYouCanSpeakを推す3つの理由|英語脳を反射神経に変える代入法トレーニングとは
学校の授業では、「動名詞」と「不定詞」を全く別物として習う。
しかしネイティブの頭の中では、どちらも「名詞の箱へ代入する仲間」として扱われているのだ。
次回は、不定詞と動名詞の本当の違いを、「代入」という視点から徹底的に解説する。ぜひ楽しみにしていてほしい。
運営者ヤヌスの心からのメッセージ
英語は「知識」ではなく「反射」です。
理解しただけでは話せるようにはなりません。
本当のゴールは“瞬時に口から出る状態”です。


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